すっかりお正月の風物詩となっている箱根駅伝。昨今の市民マラソンブームも相まって、ここ数年箱根駅伝での選手の着用率がランニングシューズの売上げに直結するとも言われ、ランニングシューズのメーカーが有名大学や選手と一体となって技術開発をしているとも言われています。過去のデータを見ながら、ここまでに熱視線が注がれるようになった経緯を追ってみたいと思います。
はじめに
まずは、過去の箱根駅伝でのメーカー別着用率の推移を調べてみました。

2017年、キプチョゲ選手がフルマラソンの2時間切りを目指したBreaking2でナイキのヴェイパーフライのプロトタイプで衝撃を与え、翌2018年の箱根駅伝で初めて選手がヴェイパーフライ4%を着用しました。この大会で往路優勝の東洋大学の全選手や、全7区の区間賞を取った選手ががこのシューズを着用していたことでナイキ旋風が吹き荒れることとなった大会です。
これ以降、2021年ではナイキのシューズが箱根駅伝での着用率96%に迫るなど、驚異的なシェア獲得した一方で、このようなスーパーシューズを開発できていなかった、かつての箱根駅伝でシェア争いをしていたミズノやアシックスは着用率が低下する一方でした。
しかし、2022年以降はナイキ一強時代を崩すべく、各社のスーパーシューズ開発が進み、各社のシェアの変動が起こっています。
箱根駅伝協奏曲
ここまで、箱根駅伝でのシューズ着用率が取り上げられるのはなぜでしょう。
- お正月2,3日の午前にテレビ放映される高視聴率コンテンツであること
- 東京マラソン以降、市民マラソンブームが起こり、多くのランニング愛好家が視聴していること
- スーパーシューズの登場以降、大会記録更新が毎年のように起こること
これらのことから日本市場において、箱根駅伝は、シューズメーカーの販売戦略のひとつになっていて、着用した選手や大学が好成績を出せば、売上つながるという認識があるということです。
実際に、2018年以降、しばらくは市民ランナーにもヴェイパーフライを入手して記録を出したいというニーズが広まったけれども、メーカーの供給量が追い付かず、販売開始時には奪い合う状況が続いてました。まさしく箱根駅伝協奏曲の始まりです。
メーカーと箱根駅伝出場大学の関係は?
箱根駅伝はお正月のコンテンツとしての視聴率が高いので、メーカーとしても広告効果は高いという認識はあったと思います。しかし、スポーツ全般に言えることですが、広告価値としては、よく映るユニフォームなどが中心でそれまでは映ることの少なかったシューズはそれほど着目されていなかったのかもしれません。
しかし、ランニングがテクノロジーの観点から解析が進み、シューズでこれまでに到達できないような衝撃的な記録が出るとなると、シューズが着目されるようになっていきました。
それまでは、大学で使用する用品は一括で一つのメーカーと契約というものであったかもしれませんが、ナイキ旋風以降はシューズは別という契約になっているようです。
例を挙げるなら、箱根駅伝優勝常連校といわれる青山学院大では、アディダスとの契約があり、ユニフォームや練習シューズなどもアディダスで統一されています。また、箱根駅伝の前には、青山学院大のチームカラーをモチーフにした”駅伝モデル”なども販売され、青山学院大が広告塔として採用されています。
しかし、2018年の時点でも青山学院大の林奎介選手は大学はアディダスとの契約でありながら、ナイキのヴェイパーフライ4%を履いて区間新記録を出す活躍を見せ、シューズと記録の関係が明確であることが実証されたことから、シューズの契約は別ということが示されたということです。
ナイキ1強の終焉と次の戦略新機軸は?
2021年以降、ナイキのシェアは落ちていき、2025年にトップの座を明け渡してし、25%未満となっています。この間、ヴェイパーフライの改良やアルファフライというさらに高機能なモデルも商品化されました。その度にメディアに注目され、記録が出たという報告もありながら、安定感が悪いなど、新しいモデルでは改良につながっていないといった報道もされていたりもしました。これにより、安定感が悪いため、履きこなすためのスキルがいるとか、ケガしやすくなったとかネガティブな印象も増え、モデルチェンジに合わせて、機能追加でシューズの重量が増加したことに加え、他のメーカーがこれに対抗できる商品を開発してきたことがシェア低下につながっていると思われます。
まず、ナイキの切り崩しはアシックスとアディダスから始まりました。
アシックスは、メタスピードスカイ、エッジというランナーのストライド走法かピッチ走法かにより異なるシューズを提案することで、より、使いやすいシューズを提案してきました。ついに反撃開始ということで注目されましたが、ナイキのシューズが数世代商品化される中で、メディアの評価も厳しくなり、初代はそれほど着目されるほどではありませんでした。
そんな中、これぞナイキの弱点を突き、1強時代の終焉を印象付けたのはアディダスのAdiosProEvo1の登場です。2024年箱根駅伝での太田蒼生、黒田朝日選手の快走は印象に残っていると思います。反発力のあるミッドソール素材をシューズ重量が200gを大きく下回る超軽量で仕上げたことが、アディダスの技術力の高さを物語っています。
ここで打ち出された『高反発性能を軽量化素材で実現する』という新機軸が打ち出され、この軸に追従したのが、アシックスのメタスピードレイになります。Evo1(定価8万円か使い捨てとなる低耐久性)で達成できなかった入手できる価格帯で使い捨てにはならないシューズを実現しました。すなわち『高反発✖軽量✖入手可能な価格帯』の実現です。
ということで、技術面で、アディダスが最高峰という印象があり、2025年から箱根駅伝での着用率トップを獲得するに至った経緯と思われます。アシックスは、日本企業らしく2番手感は否めませんが、市民ランナーでも入手可能な生産性や耐久性を実現できていることを考えると注目はトップでなくとも商品販売にはつながる堅実路線といえるのかもしれません。
今後の注目株は?
最近の箱根駅伝での着用率の伸びと新製品を見るとプーマが注目株筆頭です。
Fast-Rシリーズなどデザイン性のみかと思われるシューズを販売する一方で、安定感が高く、スキルが低くても履きこなしやすいデヴィエイトニトロシリーズなどの着実な路線のシューズも出してきていました。更に最新のデヴィエイトニトロエリート3では200gを切る軽量化を実現し、安定性の高さも継承していることから確実に販売量に反映されると思われます。
また、ミズノは、箱根駅伝での着用率は伸び悩んでいますが、昨年に発売されたハイパーワープエリートいうシューズは安定感と軽量性、反発力に加え、入手可能な価格帯という両立しづらい点を達成できている非常に魅力的に見えるシューズとなっています。
これら2社については、更に深堀りして考察したいと思っていますので、次回以降の投稿をお楽しみにしていてください。

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